「AIの進化によって、将来なくなる仕事があるらしい」
就職活動を進める中で、このような見解があることを知り、自分が志望する業界・職種は将来なくなるのではないかと、将来性に不安を感じたことがある人もいるのではないでしょうか。
AIが文章を作り、画像を生み出し、データを分析する現在、皆さんがこれから働く社会は、親世代が就職した頃とは大きく異なります。
このコラムでは、AIの得意・不得意な分野、なくなる仕事によく挙げられている「事務職」について、これから求められる力、大学生活の中でできること等について伝えていきたいと思います。
AI自体は以前から研究や業務に使われてきました。しかし、近年は生成AIの登場によって、専門的な知識がなくても、文章の作成や要約、情報整理、翻訳、画像生成などにAIを利用しやすくなりました。
AIの活用が広がっている背景には、技術の進歩だけではなく、企業を取り巻く環境の変化もあります。
日本では少子高齢化や人口減少が進み、多くの企業が人手不足に直面しています。限られた人数で業務を進め、生産性を高めることが求められる中、業務を効率化する手段としてAIやデジタル技術への期待が高まっているのです。厚生労働省も、高齢化によって労働力供給が低下すれば、人手不足にさらに拍車がかかる可能性を示しています。
企業にとっては、すべての業務に新しい人材を採用するのではなく、定型的な作業をAIに任せ、人にしかできない仕事へ人員を振り分けるという選択肢が生まれています。
技術の進歩と、コストや業務効率の見直し、そして働き手の不足。
これらが重なることで、AIの導入は今後もさまざまな業界で進んでいくと考えられます。
これからのAI時代に必要な力を考えるためには、まずAIの得意分野と苦手分野を知っておくことが非常に大切です。
得意分野はどのようなことでしょうか。
| ①大量の情報を短時間で整理する AIは、多くの文章やデータを読み取り、要点をまとめたり、内容を分類したりすることを得意としています。 例えば、長い資料を要約する、アンケート結果を整理する、複数の情報を比較するといった作業を短時間で行えます。 ②決められた条件に沿って繰り返し作業を行う 入力や分類、定型文の作成など、手順やルールが決まっている作業もAIの得意分野です。 これまで人が一つずつ行っていた作業をAIに任せることで、作業時間の短縮やミスの防止につながります。 ③文章やアイデアの「たたき台」を作る AIは、メールや企画書の文章案、キャッチコピー、質問項目など、最初の案を作ることも得意です。 何もない状態から考え始めるよりも、AIが作った案をもとに人が修正することで、効率よく仕事を進められます。 ④過去のデータから傾向を見つける 大量のデータを分析し、共通点や変化、異常などを見つけることもできます。 売上の傾向を分析する、商品の需要を予測する、製造現場で異常を発見するなど、さまざまな場面で活用されています。 |
では、逆に苦手な分野はどのようなことでしょうか。
| ①情報が正しいかを自分で判断する AIが出した回答は、必ずしも正しいとは限りません。 実際には存在しない情報や、古い情報、間違った内容を、あたかも正しい情報であるかのように回答することがあります。 そのため、人がその情報のソース(根拠)や事実関係を確認する必要があります。 ②相手の気持ちや状況を深く理解する AIは、言葉の内容を分析することはできますが、人の表情や声の調子、その場の雰囲気、これまでの人間関係まで正確に理解できるわけではありません。 相手が本当に困っていることをくみ取る、伝え方を変える、信頼関係を築くといった対応は、人の力が必要です。 ③正解のない問題について最終判断をする 実際の仕事では、正解が一つではない場面も多くあります。 会社の方針、顧客の希望、費用、安全性、社会への影響などを考えながら、何を優先するのかを決めなければなりません。 AIは選択肢を出すことはできますが、最終的に判断を下し、その結果に責任を持つことはできません。 ④想定外の出来事に柔軟に対応する 仕事では、事前に決められた手順だけでは対応できないトラブルやイレギュラーなことが起こることも多々あります。 その状況を見ながら臨機応変に行動したり、周囲と相談して解決方法を考えたりすることは、AIが苦手とする部分です。 |
これからは、AIの特性を理解した上で、適切に使い仕事の成果につなげる力が重要になります。
必要とされる力・重要となってくる力について、以下のとおり、まとめました。
| ①目的を考え、適切な指示を出す力 AIは、指示の内容によって回答が大きく変わります。 そのため、「何のために使うのか」「誰に向けたものなのか」「どのような結果が必要なのか」を整理し、具体的に伝える力が必要です。 単にAIを操作するのではなく、仕事の目的を理解することが重要になります。 ②AIの回答を確認・検証する力 AIが出した内容をそのまま信じるのではなく、本当に正しいのかを確認する力が欠かせません。 出典を調べる、複数の情報と比較する、数字や固有名詞を確認するなど、情報を疑いながら確かめる姿勢が必要です。 ③自分で考え、最終的に判断する力 AIに案を出してもらったとしても、どの案を選ぶのかを最終的に決めるのは人です。 周囲の状況や目的、リスクを考えながら、自分なりの根拠を持って判断する力が求められます。 ④相手と関係を築くコミュニケーション力 仕事では、相手の話を聞き、考えを伝え、周囲と協力することが欠かせません。 相手の気持ちや状況に合わせて対応する力、意見の違う人同士を調整する力は、AI時代にも重要です。 ⑤新しいことを学び続ける力 AIやデジタル技術は、これからも変化していきます。 現在使われているツールや仕事の進め方が、数年後も同じとは限りません。 新しい知識や技術を避けるのではなく、実際に試しながら、自分の仕事にどう活用できるかを考える、前向きな姿勢が必要です。 |
世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」でも、AIやビッグデータ、技術リテラシーなどの需要が伸びる一方で、分析的思考、創造的思考、柔軟性、リーダーシップ、協働といった人間を中心とする力も引き続き重要になるとされています。
AIに奪われる仕事として、よく名前が挙がるのが事務職です。
本当にそうなのでしょうか。
確かに、データ入力や書類整理、定型的文書の作成、ファイルの分類など、手順が決まっている作業は、AIなどのツールを使って自動化しやすい業務です。
そのため、これまで人が担っていた事務作業の一部が減ったり、同じ業務をより少ない人数で進めていく可能性はあります。
ただし、事務職という職種自体が、近い将来丸ごとなくなるとは考えにくいです。実際の事務職には、単純な入力や書類作成だけではなく、次のような仕事も含まれているからです。
・社内や顧客の事情を踏まえたスケジュール管理
・トラブルやイレギュラーへの対応
・業務の優先順位付け
・ AIが作成した文書やデータ内容の確認
・業務の進め方の見直し、改善策の提案 など
こうした場面では、あらかじめ決められた手順だけでは対応しにくく、周囲の状況を読み取り、臨機応変に判断・調整する、人ならではの力が必要になります。
今後、「事務職がなくなる」のではなく、事務職の中から定型的な作業が減り、人が担っていく業務の内容が変化していくと捉えた方が適切と思われます。
「AIに使われる人」ではなく「AIを使いこなす人」へ
AIを使うことと、AIに判断を任せきることは違います。AIが作成した文章やデータを、そのまま正しいものとして使うだけでは、AIを十分に使いこなしているとはいえません。
AIを使いこなすとは、
何のために使うのかを考える
AIに分かりやすく指示を出す
出された内容を確認・修正する
最後は自分で判断する
という一連の流れを、自分で行うことです。
これから事務職を目指す人に求められるのも、AI並みのデータ処理能力や書類作成のスピードではなく、このような一連の流れを自分で行えることだと思います。
さらに、人事、経理、総務、広報、法務など、自分が関わる分野の知識を身につけることで、AIが出した情報が適切かどうかを、より正確かつ迅速に判断できるようになります。
これは、事務職に限らず、ほかの職種にも共通することです。
これからは、頼まれた作業をそのまま処理することではなく、AIを上手に活用しながら仕事全体をよりよく進めていく力だといえるでしょう。
これからAIと上手く付き合いながら生きていくために、今のうちに身につけ、磨いておける力があると思います。
日常の中でAIを活用してみる
すでに、日常生活の様々な場面で活用している人もいるかと思いますが、使えるものから使ってみて試すと良いかもしれません。
ただし、その際は、個人情報や機密情報の流出などには注意しましょう。
普段から少しずつ使ってみることで、AIへの理解が深められることと思います。
そして、AIが出した内容を鵜呑みにはせず、自分で検証する癖を身につけておきましょう。
「人間らしさ」に磨きをかける
ゼミ、アルバイト、サークル、ボランティア、インターンシップなどで、人と協力したり、問題を発見して改善したりする経験も大切です。こうした経験は、AIの使い方だけを学んでも身につきません。
そして、大学生の今だからこそできることでもあります。
同じ目標に向かって頑張ったり、壁にぶつかった時は仲間と話し合いながら、改善策を考えたり。
そうした経験を重ねる中で、状況に応じて考え方や行動を変える柔軟さが養われていきます。
また、相手の気持ちを考えて行動する経験を通じて、人に寄り添う力やコミュニケーション力も磨かれることでしょう。
企業研究では…
「この会社では、AIやデジタルツールをどのように使っているのか」
「業務の効率化によって、社員の役割はどのように変わっているのか」
などといった視点で企業の研究をしてみるのも、企業を知るための新しい切り口になります。
入社後の働き方をより具体的に想像できると思います。
就職活動をしていると、「この仕事は将来も残るのだろうか」「せっかく就職しても、AIに仕事を奪われるのではないか」と不安になることがあるかもしれません。
しかし、これから先、どの仕事が残り、どの仕事が変わっていくのかを、今の時点で正確に予想することはできません。だからこそ、「絶対になくならない仕事」を探し続けるよりも、仕事の内容や環境が変わったときに、新しいことを学び、自分の役割を変えていける力を身につけておくことが、将来への確かな備えになります。
ゼミで意見を交わすこと、アルバイトで相手の立場を考えて行動すること、サークルで仲間と協力すること、失敗したときに原因を考えてやり直すこと。大学生活の中にある一つひとつの経験を通じて、AI時代にも必要とされる力が培われていきます。
AIを上手に活用すれば、これまで時間がかかっていた作業を減らし、自分が本当に考えたいことや挑戦したいことに、より多くの時間を使えるようになります。
大学生の今だからできる経験を重ねながら、変化の中で成長し続ける力を育てていきましょう!
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